「とっぴんぱらりのぷう」 田中芳樹のブックガイド 光文社
秋田県の方言で、昔話のラストの決まり文句が「とっぴんぱらりのぷう」なんだそうです。
理論社の「ミステリーYA!」のウェブサイトに連載されたインタビューに加筆を付け加えた、おもに古典を紹介したブックガイドです。
好きなんです。田中芳樹さん♪
思えば高校生のときからのお付き合いです
当時からの友人が、「おもしろから読んでみて」と「銀河英雄伝説」を貸してくれました。それが出会いです。
「アルスラーン戦記」「創竜伝」「マヴァール年代記」「タイタニア」「レッドホットドラグーン(あえてこっちの読み方)」などなど言い出したらキリがないから止めよう
授業中に「銀英伝8」こっそり読んでて、ヤンが死んでしまって号泣した話なんて・・・(爆)
読みつくしましたね
ここまで一人の作家に絞って全作読もうとするのはこの方と新井素子さんだけです
(ちなみに新井素子さんの作品は、刊行されたものはすべて持ってます)
田中芳樹さんについて書くのはとても難しいんです
田中作品について書くのもむずかしい
ひとつの作品をとっても、作中の誰にフォーカスをあてて書くのかを決めるのが難しい
魅力あるキャラクターが目白押しで、選べないんですもの(苦笑)
田中作品について読むたびに思うのは、彼はどんな人なんだろうということ
話をしてみたい
と、いつも思うんです(迷惑でしょうけど)
あんな物語を書く人はいったいどんな人なのか
その一端がこの「とっぴんぱらりのぷう」で垣間見ることができます
彼がどんな本を読んできたのか
「私がコドモのころから読みふけっていた本について、好き勝手オシャベリするだけです」と本の冒頭で書かれていますが、その幅といったらハンパない!!
東西の枠を飛び越え、ありとあらゆる古典を制覇してらっしゃる
ついていけないジャンルもあり、そこがまたくやしい
紹介された古典の一部を抜粋すると・・・
「モンテ・クリスト伯」
「鉄仮面」
「三銃士」
「ソロモン王の洞窟」
「ガリバー旅行記」
「ゼンダ城の虜」
「西遊記」
「水滸伝」
「三国志演義」
・・・まだまだあります
いま書いただけでも半分は読んだことありません
ジュール・ベルヌ、コナン・ドイル、H・G・ウェルズ、エドガー・アラン・ポーぐらいならまだついていけるんですが、デュマとかユーゴーとか、なんか聞いただけで遠い存在でした。
そんな遠く感じる古典の数々が、田中さんに語られるととんでもなく面白そうに感じてきます
たとえば「鉄仮面」ですが、ボアゴペという方が書いた本でルイ14世の傍若無人さに反抗した青年貴族が、裏切りにあって、鉄仮面をつけさせられ幽閉されるというお話
本作はそこまで評価されてないんですけれど、これを日本語訳したのが黒岩涙香、それを現代語約したのがなんと江戸川乱歩!
それを聞いただけでええ!と思うのにおまけがあって、黒岩さんは途中まで忠実に訳すんです。それなのに原作のあまりのつまらなさに腹をたて、「ええい俺ならこうしてやる!」ってどんどん変えていっちゃったそう(笑)
それをまた乱歩独特な感じで現代語訳しちゃったもんだから、おもしろくないはずはないっすよね
大人になった田中さんは、その全訳を読むんですが、あまりのつまらなさに驚いたそうです(苦笑)
そんな面白話がたんまりのこのブックガイド
読んだらその日から、読みたい本が一気に増えますからご注意!!!!